私は先日42歳になった。
私が豊永さん(師匠)のところへ修行に行っていた頃は
23歳だから19年も前の話である。
当時先生は64歳!なので今は83歳のはずだ!
そして、師匠と親しい巨匠「関口さん」なんと102歳!
コーヒー業界では神様的存在です。
銀座の街で「カフェ・ド・ランブル」を出されて68年だそうです。
文字通り日本一の珈琲店を営んでおられます。
驚くことに現役で焙煎されています。
熊本から東京出張のたびに出向いていますが
いつも必ずおられます。すごい!
そんな関口さんと一緒に写真を撮らせていただけるチャンスが来ましたのでパチャリ。
丁度、お会いした頃に
講談社「週間現代」に!!!
バックナンバーNo.2856
この記事は珈琲職人としては
永久保存版ですな〜〜〜!!!
今日は焙煎の師匠や巨匠の話ができましたので
焙煎機の構造について
少し語ろうと思う。
珈琲焙煎機の形式は、3タイプに分類される。
直火式焙煎機(直火式=ちょっかしき)と業界では読みます。:独特の香味。
直火式は、豆を入れる回転ドラムの胴体がパンチングメッシュとなっており穴がたくさん空いています。熱源のバーナーはドラム直下にあり、パンチングメッシュからの入り込む対流熱(炎や熱風)、加熱されたドラムからの伝導熱、釜全体からの輻射熱によって豆へカロリーが供給されます。
直火式の特徴的な部分はパンチングメッシュから炎や熱風が最短距離で直接豆に当ることです。1500℃近くになる炎の外炎部を豆に向けるためシリンダー内での豆への熱供給が他の形式に比べるとバラツキやすかったりしますが、それがメリハリのある独特の風味を作り出すことがあります。
またドラムのパンチングメッシュから珈琲豆のチャフ(薄皮)が剥れ落ちてバーナーの炎に触れて燃えることによる燻り香が豆につくことがあります。これが直火式ならではの独特な風味の一要因にもなります。
最近ではバーナーをドラムから遠ざけて豆に直接火が当らないように改造している焙煎機も多く見られるようになり直火式の進化形の一つであると思います。この場合、熱効率が低下するのでバーナーの増強を平行して行うケースが多く見られます。
直火半熱風式焙煎機:スタンダードな香味。
直火半熱風式と直火式の構造の違いは、回転ドラムの胴体がパンチングメッシュなのか鉄板なのかの違いです。直火半熱風式は構造上チャフ(薄皮)がバーナーの炎の上に落ちることはなく排気によって排出されるため燃えたチャフの燻味はほぼつきません。
それ故にクリーンさがあり酸味も引き立ちやすくスペシャルティコーヒーの焙煎では現在一番多く使用されている形式と思われます。直火半熱風式はドラム直下のバーナーにより暖められた熱風を一方向に向かって(ドラムの軸に沿って)豆に当てるために、直火式に比べ豆へのカロリー供給のばらつきが少く焙煎が安定してきます。
直火半熱風式はドラムから豆ヘ伝わる伝導熱が直火や熱風よりも多く、このドラム熱をどのように使うかによっても焙煎の幅が生まれます。ここが直火半熱風の面白さなのではないかと思います。
ドラムの鉄板の厚みを増やして蓄熱性を高めたり、ドラムの周囲に遠赤外線を発生させる仕組みを付加したり、逆にドラム構造を二重にして豆が触れるドラムに直接バーナーの炎が当たらないようにし伝導熱を抑える二重ドラム(ダブルドラム)と呼ばれるタイプもあります。二重ドラムの場合は熱風式に近い構造となります。
熱風式:クリアーな香味。
熱風式は、バーナーの位置がドラム直下ではなくドラムと切り離した外部にあります。外部のバーナーによる熱風をドラムに送り込み加熱するので、直火や直火半熱風に比べドラムからの伝導熱の影響が少なく熱風の温度や風量を調整することにより豆へのカロリー供給をコントロールします。
熱風式は構造的な自由度が高く大きさや形も様々です。ドラムも横置きでは無く縦型もあり、縦型では豆を攪拌するフィンが無く熱風の勢いで攪拌させるタイプもあります。また大型の熱風焙煎機では一度排出した熱風を再循環させてエネルギーコストを節約するタイプもあります。
熱風式は強い熱風で超短時間で焙煎することも可能であり、逆にじっくり長時間焙煎することも可能です。焙煎の自由度が高くロースターの価値観で使い方がより大きく変わってくるのも熱風式の特徴です。相対的に直火や直火半熱風の味に比べ、あっさりとした味わいに感じられることもあります。スペシャルティコーヒーの焙煎で熱風式を使われることが多くなってきました。今後に注目です。
直火・直火半熱風・熱風どの焙煎機にも云えることですが、やはり使う人によって珈琲の風味は全く異なってきます。また着地する狙う味もそれぞれであり一概にどの焙煎機が良いとも単純に割り切れるものでも無いように思います。100人のロースターが同じ豆・同じ焙煎機・同じ焙煎度に仕上げたとしても100通りの味ができます。ローストプロファイル(焙煎の過程)が異なるからです。しかし、昨今スペシャリティーコーヒーを売りにしている自家焙煎珈琲店が釜の構造も知らずにして、スペシャリティー、スペシャリティーと言っているのは如何なものか!残念ながら「きちんとした知識」+「きちんとした焙煎機」がなければ「きちんとした珈琲」にならないことだけは、ここでお伝えしておこう。
コーヒーには100点というものは存在しない!だからこそ今日も世界中の焙煎士が「100点のコーヒー」とは何か?と自問自答を繰り返しながら日夜研究に励んでいるのだと思います。
※ あくまでも私の個人的には熱風の構造が、私自身が今作りたい素晴らしい珈琲の風味に向いていると考えており タオの現在のコーヒー焙煎機はガス供給会社やメンテナンス会社などと協力し独自に改良を重ねた熱風焙煎機を使用しています。今後焙煎機や焙煎技術の進化とともに考えも変化するかもしれませんし、進化させていけたらと思います。