HASAMI 波佐見焼をお勧めしております。

懐かしく、そして新しい陶磁器の町。

緑豊かな山々に囲まれた長崎県・波佐見町。
瓦屋根にそびえる煉瓦造りの煙突は、
ここが“焼き物の里”であることを教えてくれる。
約400年にわたり窯の火を守り続けてきたこの町で、
今、新たなコラボレーションが産声を上げた。
 
 

幅広い世代に愛される理由。

 

波佐見焼の誕生は、安土桃山時代。時の大村藩主が、

朝鮮から陶工・李祐慶を伴い帰郷したことにはじまる。

以来、焼き物がさかんになり、一度に大量の器が焼ける

「登り窯」も登場。その一部は、今なお波佐見町の

各所で見ることができる。

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かつて、庶民には手が届かない高級品だった陶磁器。

それが「おうち器」になるまで普及したのも、

波佐見焼の存在があったからこそ。

現在も、この地域で働く約4割以上の方が窯業に携わっている。

 

「時代のニーズに応えながら、デザイン・機能・品質ともに

親しまれる陶磁器をつくる。それが波佐見焼らしさ。

記録より記憶に残る陶磁器づくりがモットーなんです」。

 

そう語るのは、大正9年創業の陶磁器卸売会社・株式会社浜陶の黒板伸弘さん。

 

「約10年前には、よりデザイン性を追求した『HASAMI』

ブランドを町ぐるみで立ち上げました。その甲斐もあってか、

波佐見町で焼き物修行をしたいという方を含め、

若い世代のファンが都会を中心に増えているんです」。

 

 

 

ユニーク&ハイクオリティな分業体制。

波佐見焼のユニークさは、その生産体制にもあらわれている。

「焼き物」というと、ひとりの職人が成形から焼成までを

行うと想像しがちだ。でも波佐見焼は違う。

 

原型からの型づくり、生地づくり、素焼き、下絵付け、

釉かけ…それぞれの工程を、窯元や型屋、生地屋に属する

さまざまな職人が担当する。つまり、地域全体が分業体制で

焼き物に取り組んでいるということ。だからこそ、

クオリティの高い陶磁器を、安定して量産できる。

ひとつの焼き物には、それぞれの持ち場を

守る職人の矜恃が詰まっているのだ。

 

そのスタイルが、メイドインジャパンのものづくりを

大切にするKalitaを惹きつけた。

 

そこでスタートしたのが、『HASAMI』とKalitaが

共同で取り組む新作ドリッパー製作プロジェクト。

黒板さんがコーディネーターとなって波佐見町と

Kalitaをつなぎ、約1年間をかけて完成させた。

 

 

 

 

最新の技術で、いのちを吹き込む。

 

 

テクノロジーが叶えるかたち。

新作ドリッパーの製作にあたり、まず黒板さんが

相談したのが、窯元となる株式会社中善と、

波佐見町にある長崎県窯業技術センター。

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長崎県窯業技術センターは、県の焼き物産業の

振興や最新技術の開発を担う施設。

ここに所属する依田慎二さんが、

今回のデザインと陶磁器の原型作製を担当した。

 

注目は、デザインにCADデータ、石膏型製造に

最新の陶磁器型製造用モデリングマシンが活用されていること。

「カリタ式のコーヒードリッパーは、一般的な陶磁器製品に

比べるときわめて複雑な形状をしています。

また、コーヒーを抽出する機能を十分に満たす必要もある。

細かな検証や調整を重ねていく上で、

3Dデジタルデザイン技術が効果を発揮するんです」と依田さん。

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「心がけたのは、スタンダードかつKalitaらしいデザインにすること。

Kalitaのプラスチック製ドリッパーを陶磁器で再現することをイメージし、

天然素材の表面の柔らかさを活かしながらムダのない

シンプルなデザインに仕上げました」。

 

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培われてきた職人のリレーション。

 

 

すべてはひとつの製品のために。

そのデザインを手に取れる焼き物へと変換するのが窯元と職人たち。

長崎県窯業技術支援センターでつくられた石膏型を原型に、

それを増やすための型と、陶磁器の量産用の型を製作するのが型屋だ。

陶磁器は焼き上げると約13%ほど縮むため、

それを見越して完成品のサイズより大きめの型をつくるという。

新作ドリッパーでは、複雑な形状をかたちにするために

上下左右に4分割できる型を製作した。

 

次は、器のもとをつくる生地屋の出番。今回は、

複数の型を重ね、粘土状になった陶土を圧力で一気に

流し込む「圧力鋳込み」という方法を採用。陶土には、

焼き上がると青みがかったニュアンス持つ天草陶石の中でも、

特に良質な素材のものを選んだ。

型から外して乾かした後は、湿ったスポンジで丁寧に拭いていく。

「表面を滑らかにするためのこの作業も、

力の入れ加減に熟練を要する重要な工程なんです」と黒板さん。

 

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妥協なきトライ&エラー。

 

そうして仕上げられた生地は、窯元の工房へ。

窯入れを待つさまざまな製品が整然と並ぶ様は圧巻だ。

この時点ではまだ、生地に触れるとしっとりとした手触りがある。

これを自然乾燥させて約900℃で素焼きしたのち、

一つひとつ手作業で釉薬にくぐらせていく。

その後、約1300℃のガス窯で約14時間じっくりと

焼成すればできあがり。完成品を光にあてると、

透けてみえるくらい軽く薄く、美しい。

天草陶石の色味と相まって、その佇まいは透明感を感じさせるほどだ。

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窯元である株式会社中善の中尾善之さんは、

カリタ式の特徴でもあるドリッパー底部の三つ穴に

特に苦心したと語る。「試作品が焼き上がった後に、

きちんと三つの穴から水が落ちるかどうかを何度もテストしました。

素通し、フィルターあり、フィルターにコーヒーの粉ありなど、

それぞれの条件下できちんとドリップできるかどうか。

もちろん、失敗したらまたデザインからやり直しです」。

妥協なきものづくりへの情熱を共有していること。

それが波佐見焼の分業スタイルを支えているのかもしれない。

 

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当店でも、HASAMIカリタドリッパーを推奨いたします。